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熊野古道「中辺路」ハイライト②~高野坂・補陀落山寺と大門坂から那智大社・那智の滝の神秘ウォーク~
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『熊野古道ハイキング那智編〜那智の滝の神秘ウォーク』ならではの6つのポイントを紹介します。
1. 高野坂ウォークは、朝7時から
2. 補陀洛山寺のご本尊と絵解き曼陀羅
3. 大門坂—これぞ、熊野古道!
4. 熊野那智大社と那智山青岸渡寺へ
5. 那智の滝の神秘ウォーク、二の滝を目指す
6. 那智大社別宮 飛瀧神社
今日の天気は、予想では一日雨。雨の日に高低差がある那智の滝の神秘ウォークは、もはやハイキングとは言えないかもしれませんね。しかし、参加者はみんな歩く気満々の人々です。
バスは足柄SA、浜松SA、御在所SAで3回休憩したのち、6時35分に道の駅・熊野花の窟(いわや)に着きました。ここでハイキングの準備をして、高野坂の広角入口に向かいます。
目次
高野坂ウォークは、朝7時から
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早朝7時ころから熊野古道高野坂を歩きはじめます。山の中はまだ薄暗く、鬱蒼とした気配が漂っています。
(雨と暗がりのため、写真が不鮮明なものもあります。ご容赦ください)
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
歩き始めて5分ほどで、御手洗の念仏碑が右にあります。中央の地蔵尊は1672年、伊勢の人が那智山と新宮(熊野速玉大社)で100日念仏を唱えたことを記念して建造されました。
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金光稲荷神社を囲む森は「おな神の森」と言われます。神武天皇が景色を眺めたこと=「おながめの森」が由来となっています。
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
金光稲荷神社の横を抜けて、太平洋の熊野灘が眺望できる鯨山見跡(くじらやまみあと)に出ます。
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沖の鯨を見張った場所を山見といいます。鯨を発見するとのろしを上げて、浜や船団にその位置を知らせます。
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弁慶の力石
高野坂ウォークは、最後に弁慶の力石を見て終わりになります。約40分のウォークでした。右は添乗員の武内様。
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弁慶の力石から歩いてきた高野坂を振り返ると、熊野古道らしい石畳が続いていました。
補陀洛山寺のご本尊と絵解き曼陀羅
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補陀洛山寺の千手観音のご本尊を開帳
補陀洛山寺(ふだらくさんじ)のご本尊は衆生を救済しようとする慈悲にあふれた千手観音(イザナミ)です。普段は閉じられている扉を開けて見せてもらいました(撮影禁止)。その神々しさを言葉で表すのはとても難しく、ご尊顔を拝見した時から圧倒され、ただ無言で見ているだけでした。熊野那智参詣曼荼羅は布教のための絵解き
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那智山の比丘尼や山伏が熊野那智参詣曼荼羅(くまのなちさんけいまんだら)を全国に持ち歩き、人の集まる場所で布教したといいます。
画面には、山伏姿のガイドに導かれる白装束の二人(夫婦)が、色々な場所に描かれています。
この曼陀羅は熊野信仰を信仰心の薄い人々にわかりやすくするための「絵解き」だったのです。つまり、今で言うと広報活動のためのポスターと言えるでしょうか。この曼陀羅は、今では31幅しか残っていないそうです。
住職が差している上の横に並んだ建物群が、熊野那智大社になります。
右下の川関から始まる山内の参詣道には白装束の参詣者をはじめ、御師・高野聖・僧侶・琵琶法師・高貴な人物など多くの人物が描かれている。画面を見る者は、白装束の参詣者と共に山内を巡り、参詣道の最後は画面左上の妙法山阿弥陀寺に至ることになる。
(國學院大學図書館デジタルライブラリー)
補陀洛山寺に隣接して熊野三所大神社(くまのさんしょおおみわやしろ)があります。
熊野三権現—夫須美大神(イザナミ)・家津美御子大神(イザナギ)・速玉大神(スサノオ)の三柱—を主祭神とすることが名前の由来とされています。
また、「浜の宮王子」「渚の宮」とも呼ばれ、熊野三山に詣でる人々は、ここで身を清めてから那智山へ向かったともいわれています。
補陀洛山寺(ふだらくさんじ)の御朱印
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大門坂—これぞ熊野古道!
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国指定歴史の道「熊野古道大門坂」は、県指定天然記念物「那智山旧参道の杉並木」です。石畳267段、杉並木は両側で132本、約600メールの古道です。これぞ熊野古道というべき、石畳ではないでしょうか。高低差がありますが、20〜30分前後で歩けます。
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那智の七石とはこの鏡石・唐斗石・平石・三ツ石・降石・笈掛石・烏石のようですが、意味が調べても出てきませんでした(謝)。烏石は熊野那智大社にあります(後述)。
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大門坂の終わり近くに那智山観光センターがあり、神秘ウォーク後の集合場所(夕方5時頃)になります。その先1〜2分ほどで表参道467段の階段があり、熊野那智大社と那智山青岸渡寺へと至ります。
熊野那智大社と那智山青岸渡寺へ
補陀洛や 岸打つ波は 三熊野の 那智のお山に ひびく滝津瀬熊野三山の一つ那智山は、もともと那智の滝を中心にした神仏習合の一大修験道場でした。明治初期に青岸渡寺と那智大社に分離しました。
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青岸渡寺 西国三十三所 巡礼の旅第一番
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山門(仁王門)
表側に阿吽(あうん)の仁王像、裏側に狛犬が安置されています。
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那智大滝において修行を積み、滝壷で八寸の観音菩薩を感得し、ここに草庵を営んで安置しました。
「青岸渡」とは「青い海原を渡ったその彼方には、観音の浄土がある」という観念を示しています。現在は天台宗。
【ご本尊】
如意輪観世音菩薩(にょいりんかんのんぼさつ)。如意宝珠を持ち意のままに宝を出し、一切の人々の願いをかなえます。
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門の向こうが熊野那智大社
青岸渡寺の御朱印
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熊野那智大社と八咫烏(ヤタガラス)
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熊野那智大社
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拝殿の左側にある御縣彦社(みあがたひこしゃ)
【ご祭神】建角身命(タケツヌミノミコト)。より良い方向へ導く、お導きの神様。
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拝殿にて団体祈祷を受け、巫女舞を見てから、拝殿後ろにあるご本尊にもお参りできました。
【御祭神】右は神仏習合の仏教名
第一殿 瀧宮 | 大己貴命(後のオオクニヌシ) | 千手観音 |
第二殿 證証殿 | 家津御子大神(スサノオ) | 阿弥陀如来 |
第三殿 中御前 | 御子速玉大神(イザナギ) | 薬師如来 |
第四殿 西御前 | 熊野夫須美大神(イザナミ) | 千手観音 |
第五殿 若宮 | 天照大神(アマテラス) | 十一面観音 |
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第五殿と第四殿
第二殿と第三殿
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第一殿
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第五殿の前にある烏石
奈良の橿原(かしはら)の地まで神日本磐余彦命(カムヤマトイワレビコノミコト。後の神武天皇)を案内した八咫烏(ヤタガラス)。その使命を終え烏石に姿を変えて、ここで休んでいると伝えられています。左が頭で、右が尾羽になります。
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樹齢約850年。平重盛が手植えしたものと伝えられています。県天然記念物。幹の中は空洞化しているので、護摩木または絵馬を手に持ち、胎内くぐりができます。
(護摩木300円・絵馬500円)
熊野那智大社と御縣彦社(八咫烏)の御朱印
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那智の滝・神秘ウォーク、二の滝を目指す
熊野那智大社の御祈祷を受けた人だけが、那智山に入れます。那智山は熊野那智大社と青岸渡寺の後ろに広がっています。いわゆる那智の滝は「一の滝」で、その上流の滝と合わせて那智四十八滝があり、熊野修験の修行地となっています。今回のツアーのハイライトは、那智の滝・二の滝までの神秘ウォークです。昨晩から雨が降っていますので、案内人によると、水量がかなり増しているそうです。
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
水に入ることも含め、4度ほど沢を渡ります。雨と苔で足場が滑りやすくなっていますので、よろけると下半身まで水に濡れてしまいます。
しかし、案内人たちが親切に手をとって渡してくれるので安心です。

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最後にもう一回沢を渡れば、目的の二の滝が左手に見えてきます。
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この岩の上で、安倍晴明が修行したそうです。海底の隆起による裂け目のようなスジが見えます。

那智の滝・二の滝
落差23メートル、幅7メートルの二の滝は、水量が多くゴウゴウと音を立てています。
一の滝である那智の滝を男性的とすれば、如意輪観音(にょいりんかんのん)の滝とも言われている二の滝は女性的な滝です。滝壺は、扇形に広がっています。もう少し上から見られれば、富士山のように見えそうです。
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ハードな神秘ウォークの修行の後には、この眺望はご褒美でした。
那智大社別宮 飛瀧神社
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三重の塔と那智の滝
個人的には今回のツアーの目的が、那智大社別宮 飛瀧神社(ひろうじんじゃ)である那智の滝を見ることでした。雨が降っていたせいか、水量が多く133メートルの落差は迫力がありました。滝壺の深さは10メートルもあるそうです。そして、日本3大名瀑は、栃木県日光の華厳の滝、茨城県の袋田の滝、そしてこの那智の滝です。
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神秘ウォークから戻ってきて、三重塔から5分ほど坂道を下ると、飛瀧神社の鳥居があります。そして最後の133段の階段を下ると、那智の滝が目の前に現れます。
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那智の御瀧 拝所舞台に上がれば、那智の滝をほんの少し正面間近から見られ、滝壺の水「延命水」も飲めます。また、「那智御瀧 御瀧神社 延命御守」をいただけます。
(大人300円 子供・小中学生200円)
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那智大社別宮 飛瀧神社の御朱印2種
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
【ご注意】
昼食または早い夕食のお弁当の配布は、神秘ウォークの後(16時〜17時)になります。ですから、SAでしっかり朝食を食べておいてください。
まとめ
『熊野古道ハイキング那智編〜那智の滝の神秘ウォーク』ならではの6つのポイントを紹介しました。1. 高野坂ウォークは、朝7寺から
2. 補陀洛山寺のご本尊と絵解き曼陀羅
3. 大門坂—これぞ、熊野古道!
4. 熊野那智大社と那智山青岸渡寺へ
5. 那智の滝の神秘ウォーク、二の滝を目指す
6. 那智大社別宮 飛瀧神社
今日のツアーは終日雨でした。雨の日に高低差がある那智山を歩く神秘ウォークは、もはやハイキングとは言えないかもしれません。ですから、修験者になった気持ちで黙々と歩きました。
長い日数をかけて、古の参拝者たちが那智山を目指した気持ちが、わかるような気がしたバスツアーでした。
こちらのツアーに参加するにはコチラ
「熊野古道ハイキング 那智編」
※当記事の内容は個人の感想を含み、諸説ある話の1つを基に作成されているため客観的な事実を表すものではありません。また、特定の説を支持したり、異なる説を否定したりするものではないことをご了承ください。なお、内容についてのご質問はお受けいたしかねます。
この記事を書いた人
渋谷 良久
2007年頃から、年に2〜3回趣味で日帰りバスツアーに参加していました。
当初は、はとバスをメインに、読売旅行、クラブツーリズムなどを利用していました。
2017年頃から神社に興味を持つようになり、(株)四季の旅のツアーに参加するようになりました。
カメラを持ってあちこち動いていますが、皆さんのご迷惑にならないよう気をつけています。
どうぞ、よろしくお願いいたします。